民泊とは
そもそも民泊とは何か
一般的な民泊の定義は「ホテルや旅館などの宿泊施設の代わりに一般の民家に宿泊すること」とされています。
古い用法だとホームステイに近いところもあり、無償で一般家庭が宿を提供するという意味合いがかなりあったようです。
現在ではそのような意味での民泊はほとんど見られなくなり、空き部屋の有効活用やインバウンド需要の高まりを背景に、投資ビジネスとしての簡易の宿泊施設としての民泊が、現在メディア等に良く取り上げられる民泊であるといえます。
Airbnbの躍進と急増した違法民泊
現在のように毎日のように「民泊」という言葉を目にするようになった原因として、Airbnbの影響を外すことはできないでしょう。
2008年に設立されたAirbnbは、貸したい空き部屋等を登録しておくという簡便な利用スタイルで大ブレイクしました。
空き部屋や空家のオーナーは貸したい空き部屋を登録しておけばサイトから借りたい旅行者が申し込んでくれるので、とても簡単に空き部屋を有効利用できます。
当然ですが有料であり、そこには古い民泊のような無償での人的な関係性はありません。
その後、Airbnbのような貸し手と借り手を繋ぐサービスが国内外で続々と誕生しています。
Airbnbは日本でも後述するように空き部屋問題と観光需要の増加を背景に、利用者を急増させていきます。そしてその結果、違法民泊と言われる必要な許可を得ずに営業している民泊の急増に大きな役割を果たすことになります。
日本の空き家問題と観光需要の増加
2000年代以降、人口減少や需給ミスマッチなど、様々な要因が積み重なって空家・空き部屋が増加し、2010年代にはなんとアパートなどの賃貸住宅は5戸に1戸が空き部屋になっているといわれています。店舗・貸事務所などについても以前ならば借り手がつかないことが考えにくかった地域の物件でも「テナント募集」などが目に付くようになってきました。
その一方でこの10年ほどで外国人観光客は倍以上になっており、宿泊施設の不足問題が深刻化してきていました。日本では大型のホテルの開業にはかなりのコストが必要で、なかなか簡単には増やせません。また、ホテルよりももっと簡便な施設で宿泊したいという需要もかなりありました。
そしてその両方の問題の解決策として登場したのが民泊でした。空き部屋を何とか利用したい側と、観光需要の受け入れ先増加の必要性といった思惑の一致から、空き部屋などを利用した違法民泊が急増する事態となってきました。
民泊と旅館業法などの法律問題
「違法民泊」とは何が違法で、何が問題なのでしょうか。
日本ではホテル・旅館などの宿泊施設を営業するためには旅館業の許可を取る必要があります。民泊はその実態としては一般的にゲストハウスと言われる旅館業法上の簡易宿所に該当すると言えます。
簡易宿所はホテルや旅館ほどではないものの、その許可にはかなり厳しい基準があり、それをクリアしなければ許可は得られません。許可を得るためにはそれなりのコストが必要で、建築物によっては実質的に不可能なものも多くあります。
旅館業法が厳しい基準を設けているのには、宿泊客の安全面や衛生状況を確保することや大勢の人の出入りによって周辺の環境に悪影響を及ぼさないようにすることなど理由があるのですが、その基準のクリアには大きなハードルがあることは事実です。
そこで以前から無許可で営業したり、賃貸と称して実際は宿泊させている人はいたものの、近年の旅館業法違反の違法民泊の増加は比較にならないレベルになりつつあります。
民泊と旅館業法をめぐる法改正の進展
「違法民泊」の背景は上記のとおりですが、問題の改善に向けて動きがあります。
それが特区民泊や民泊新法の制定の動きと旅館業法の改正による要件の緩和です。
以前よりも民泊や簡易宿所の要件を緩和して許可を取りやすくしつつ、それでも許可を取らず違法な操業を続ける民泊については厳しく対処していく・・・そういった流れになっていくことが予想されます。
宿泊施設の不足は解決していくべき問題ですが、それが違法なものであっては健全な観光産業の発展は見込めないという事でしょう。