特区民泊と民泊新法

特区民泊とは

2016年10月末からは大阪市でもいわゆる特区民泊の申請受付がスタートしました。

この特区民泊は東京都大田区は2016年1月に、大阪府では4月に「国家戦略特区」として民泊条例を施行し、スタートが切られました。
近年の民泊の急増を受けてさぞや申請が殺到…と思いきや、東京都大田区での認定件数がスタートから半年以上経過しても23施設…、大阪府に至ってはたった3施設という、当初の意気込みからは肩透かし感の強い状況になっています。

この理由と特区民泊の今後について説明していきたいと思います。

特区民泊の「特区」とは「国家戦略特区」

まず、特区民泊というのはいわゆる旅館業法上の施設ではありません
人を宿泊させるという内容は同一であるものの、法律的にはまったく別のシロモノというわけです。

特区民泊の「特区」とは「国家戦略特別区域法」に定められている「国家戦略特区」の「特区」になります。この「国家戦略特区」とはどういうものかというと

この法律は、我が国を取り巻く国際経済環境の変化その他の経済社会情勢の変化に対応して、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展を図るためには、国が定めた国家戦略特別区域において、経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点を形成することが重要であることに鑑み、国家戦略特別区域に関し、規制改革その他の施策を総合的かつ集中的に推進するために必要な事項を定め、もって国民経済の発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。

これは要するにどういうことかというと、日本が今まで通り規制がちがちだと経済発展もおぼつかないし、国際競争力も落ちていく、かといって一気に緩めると、色々弊害もあるだろう。だからまず、特定区域に限って規制を緩めたり、構造改革を行って経済発展を促して、国民全体が豊かになるようにしていこうじゃないか…のようなことです。

観光立国による経済発展を図りたい、しかし旅館業法を全面的に緩めてしまうわけにもいかない。そのため「国家戦略特別区域法」で一部の区域に限って旅館業法の特例を認め、旅館業法よりも緩やかな条件で民泊を営業できるようにした、というわけです。
そしてその適用を受ける地域が「特区」であり、「特区」での要件で行う民泊だから「特区民泊」なのです。

ただし、特区民泊について「国家戦略特別区域法」がすべて定めているわけではありません。実際には法が定めているのは大枠だけで、「国家戦略特別区域法施行令」という行政の命令がもう少し細かいところまで決め、実際の運用内容を決めているのはそれを受けた各「特区」の条例です。

逆に言えば法で「特区」に定められていても、その自治体でそれを受けた条例が制定されなければその地域であっても特区民泊を営業することはできません。

特区民泊申請が伸びなかった理由は

上記のとおり、スタートからイマイチ申請が伸びていない特区民泊申請ですが、その理由として全体的に思ったよりも要件が厳しめととらえられたこともありますが、最大の理由はなんといっても滞在期間に6泊7日以上という条件があったことです。

やはりこの滞在期間による営業の限定は、実際の営業上の採算を考えると割に合わないと判断する方が多数であったようです。

ただ、この民泊申請にとって最大のカベであった滞在期間は2016年10月25日に滞在要件を2泊3日以上に緩和する政令改定が閣議決定され、大阪市でも早ければ2017年初めごろから緩和した要件での申請の運用がはじまるとのことです。

民泊新法とは

民泊新法制定の動き

民泊の活用とその法規制を巡り、一つの動きが特区民泊ですが、もう一つの大きな動きが「民泊新法」の創設です。
平成28年6月2日に「規制改革実施計画」が閣議決定され、民泊サービスにおける規制改革の全体的な方向性が定まってきました。

ここではその制度の大まかな枠組みについて説明していきます。

全体の枠組みと対象となる民泊

民泊新法では民泊を「ホームステイ型」と「ホスト不在型」の類型に分け、それぞれの類型について旅館業法とは別の法制度を新設する、つまり民泊新法の対象となる施設はホテルや旅館などの宿泊施設ではなく、あくまで「住宅」という位置付けになっているのが最大の特徴だと言えます。

ここで「ホームステイ型」とは「家主居住型」ともいい、住宅提供者が住宅内に居住しながら当該住宅の一部を利用者に貸し出すものと想定されています。

一方「ホスト不在型」とは「家主不在型」といわれ、個人の生活の本拠でない、又は個人の生活の本拠であっても提供日に住宅提供者が泊まっていない住宅を利用して、提供する住宅において「民泊施設管理者」という役割を担う存在を置いて行うことになります。

家主が実際に居住していて直接管理可能なものと、家主が不在で管理人を置くような形態を分け、後者については要件をやや厳しくする、という考え方のようです。

制度の最大のポイントは、どちらの類型であっても許可制ではなく、届出制であるということです。詳しい話は省きますが、許可制と届出制では難易度にかなりの差があるといえます。

民泊新法の重要ポイントは

民泊新法の重要なポイントはいくつかありますが、まずは運営を計画している方に対するポジティブなものから。
新法の要件を満たす民泊については住居専用地域でも民泊の営業を認めるとされています。

現在違法民泊の多くは住居専用地域にあるマンション等を利用したものであると考えられ、住居専用地域にある建築物では旅館業法においても特区民泊においてもでも民泊の営業が認められることはほぼ考えられないため、そういった用途地域での合法民泊営業に大きく門戸を開くものともいえそうです(※)。

一方運営側にとって厳しい条件となりそうなのが、どちらの類型であってもおそらくは営業日数の上限が設けられるであろうことです。
年間上限日数は現在1年の半分である180日が有力となっており、そのとおりに成立すると、1年のうち半分しか営業することができないため、残り半分の期間の使用用途について何らかの方策を考える必要が出てくると思われます。

現在違法民泊の多くは住居専用地域にあるマンション等を利用したものであると考えられ、住居専用地域にある建築物では旅館業法においても特区民泊においてもでも民泊の営業が認められることはほぼ考えられないため、そういった用途地域での合法民泊営業に大きく門戸を開くものともいえそうです(※)。

2017年3月に閣議決定されたもののまだ法として成立していませんし、実施していく為の行政命令等もこれからですので評価は難しいと思いますが、利用を検討している方にとって、なかなか判断が難しい制度となりそうです。

中でも法第2条の「住宅」の解釈がどうなるのかに着目していただきたいと思います。条文だけでは一戸建て住宅のみ指すのかそれともマンションやあるいは事業用のビル等でも該当する場合があるのかはわかりません(2017年5月時点で役所に問い合わせてみましたが、まだわからないようでした)。

法第2条の「住宅」の解釈は、建物の用途が何である必要があるのかにも関係します。実は特区民泊においてはこの建物用途が「住宅・共同住宅」用途である必要があったため、「住宅・共同住宅」用途に変更できない古い事務所ビルの経営者の方などが断念せざるを得ない場合が見受けられたからです。

※ただし、各自治体条例により更に規制をかけることの可能性が盛り込まれているため、地域によっては条例により引き続き住居専用地域では民泊が認められない可能性があります。なお、年間上限日数についても自治体の条例により制限を受けることがあるようです。

平成29年6月9日追記
本日、住宅宿泊事業法、通称民泊新法が成立しました。
法の成立により事態は一歩前進しましたが、法を実施するための行政命令や自治体の条例の整備はまだまだこれからであり、その行方に注視していきたいと思います。
これらについての情報も、引き続き当サイトにて取り上げていきたいと思います。

平成30年2月27日追記
平成30年2月23日、京都市の民泊関連条例が成立しました。
主要な点は
① 住居専用地域での営業日は、自宅の空き部屋を貸す家主居住型や市長が認めた京町家を除き、観光オフシーズンの1月15日~3月15日に限ること
② 管理者に民泊から半径800メートルを目安とした「10分以内に到着できる場所」での待機を求める駆け付け要件を科したこと
などです。京都市の民泊関連条例についてはいずれ個別ページで取り上げていきたいと思います。

ご相談のお電話はこちら ご相談のお電話はこちら

運営:行政書士かつみ法務事務所

旅館業・民泊メールでのお問い合わせはこちら

お名前*

your name

メールアドレス*

e-mail address

郵便番号

postcode

住所*

address

ご用件*

inquiry body

*は必須項目です。

このページの先頭へ