旅館業法の改正スケジュール
旅館業法の大改正の提言
平成29年には旅館業・民泊に関するものとしては、まず民泊新法の制定が予定されています。
しかしそれを上回る影響を及ぼす可能性があるのが旅館業法の実質上「初」と言ってよいかもしれない大改正です。
旅館業法は1948年に制定された法律です。その後、小幅な改正はあったものの、大規模な改正はありませんでした。。
終戦直後の1948年と観光立国を目指す現在とでは状況が大きく異なります。旅館業法にはいまだ重要な価値判断や規制の方向性がありますが、現代の多様化したニーズや社会状況の変化に対応した改正の必要性も強く主張されています。
このような動きの中、2016年12月6日、政府の規制改革推進会議は旅館業の規制緩和を求める提言を発表。旅館業法の大改正が、いよいよ現実のものとなりそうです。
ここで提言されたのは、以下の旅館業法の規定の撤廃です
- フロントの受付台の長さ1.8m以上
- 対面での本人確認を必須とすること
- ホテルのトイレは水洗式かつ座便式
- 共同トイレは男女を区分、便器の数は大乗が原則ほぼ同数
- 洗面所にはせっけん、タオルなどをおく設備が望ましい
- ホテルの最低客室数10室以上、旅館5室以上
- 寝具は洋室がベッド、和室が布団
- 最低床面積は洋室が9㎡、和室が7㎡
- 照度の基準(フロントは700~1500ルクス、玄関は300~700ルクス)
厚労省は今回の提言を踏まえて年内に具体的な見直し内容をまとめる予定で、来年3月ごろに改正案を国会に提出する見通しとのことです。
規定撤廃は何を変えるか
このページを書いている時点(2016年12月下旬)ではまだ具体的な内容が決定していないため、実際にどうなるかはいえないものの、もし提言通りに規定撤廃が行われた場合はかなりの影響があると考えられます。
旅館業許可・民泊関連ではまず民泊新法に目が行きそうですが、民泊新法は営業日数制限が確実に盛り込まれそうなことからあまり反応は芳しくないように思えます。むしろ簡易宿所許可がとりやすくなる可能性が高いこちらの大改正の方が、新規参入を促しそうです。
簡易宿所許可取得で特にポイントになりそうな規定撤廃は2つあります。まず、このサイトではくどいくらいに述べているフロントの緩和です。尤も今回強調したいのはスペースの問題ではなく、運営上の問題です。
フロント設置にはスペースを取るという問題のほかに、人員を置かなければならないという運営・人件費的な面での問題がありました。
宿泊客の本人確認は必ず対面での本人確認が求められているのです。このような方式は現状にそぐわず、現場の負担も大きいため、今回の提言では情報通信技術(ICT)を活用した本人確認の活用で、対面での本人確認を不要としています。
2つ目はトイレの数についてです。許可の取得のしやすさという点ではこちらの方がおそらく重要です。現在は宿泊人数に対応したトイレの数の整備が必要とされ、これが新規開業の大きな壁となっている実情があります。
水回りの工事にかかる費用は結構高く、しかも建物によって金額に違いも出てきます。特区民泊以外にマンションなどで民泊を行うのが難しい理由の一つがこのトイレの設置だといえるでしょう。
そのような理由から、もしも提言通りだとすると簡易宿所許可へ与える影響はとても大きいのです。
特区民泊の予定が今のところない京都での開業を考えている方は、ぜひ今後も旅館業法の改正に注目していただきたいと思います。